古代ギリシャの医師が命名した「チフス」

ギリシャで流行したことがきっかけで名付けられた病気

チフスは名前を知っている人も多い感染症で、その歴史は古代ギリシャまで遡ります。
ギリシャはヨーロッパの中の一国としてよく知られており、その古代の歴史については学校の授業などで学ぶことも多いです。
古代ギリシャにはヒポクラテスという有名な人物がおり、この人物についても教科書で読んで知っているという人も多いはずです。
ヒポクラテスは医師として活動しており、このときに流行した感染症にチフスと名付けた人です。

なぜこのような名前になったかというと、それはチフスの症状に由来しています。
チフスに感染した人は、高い熱を出すようになります。
人の体温は36度くらいが平熱ですが、チフスに感染すると38度や39度など、かなりの高熱になります。

こうした高熱を出すと、激しい頭痛がするだけでなく、幻覚の症状が起きるようになります。
幻覚とは、本来は見えないはずのものが見えるようになることです。
例えば部屋に誰もいないはずなのに人がいるように見えてしまったり、虫が沢山いるように見えたりするのです。

また、錯覚を起こすこともあります。
錯覚とは、ある事象と別の事象が混ざったような感覚になることです。

このような症状は他の病気ではあまり見られず、霧がかかった場所にいるような感覚に似ています。
そこでヒポクラテスは、ギリシャ語で霧という意味の単語であるtyphusにちなんで、この感染症をチフスと名付けたのです。
これによってチフスは広く多くの人に知られるようになり、感染症として認識されるようになりました。

衛生面が大きく関係する感染症

チフスは世界的に感染が広がりましたが、その大きな原因となったのが「衛生面」です。
この感染症は、戦争が起きているときや貧困な人がたくさんいるときに流行しやすい性質があります。
その根本的な原因は、戦争や貧困などによって起こる衛生環境の悪化です。

例えば水回りが汚いと、そこから菌が繁殖することになります。
汚物が道端などに捨てられていると、これも感染拡大の原因になります。

日本は今でこそ清潔な環境が整いつつありますが、以前は不衛生な所もありました。
こうした場所からチフスが流行して、多くの人が被害に遭ったのです。

現在でも注意する必要はある

現在、日本でのチフスの流行は収まっており、多くの人に感染することはありません。
ただ、海外ではまだチフスにかかってしまうリスクがありますから、旅行の際などは気をつける必要があります。
海外旅行から帰ってきた人がチフスに感染する場合もありますから注意しましょう。

チフスも以前は猛威を振るった病気のため、油断は禁物です。
しっかりと注意して、感染しないようにする必要があります。