今なお人類が戦い続けている「マラリア」

マラリアの歴史

マラリアという言葉は、イタリア語の「悪い空気」が由来です。
かつて、この病気は温熱帯で発生する瘴気に原因があると考えられていました。
それがマラリアという名前の由来ですが、17世紀以降、顕微鏡の発達によって細菌の研究が進んでいくなかで1880年にマラリア原虫が発見されました。
ただ、蚊によって病気が媒介されることが証明されたのは、1897年とさらに後のことです。

このように、マラリアの全貌がわかったのは人類の歴史から見るとつい最近のことですが、人類は太古からマラリアに悩まされていたことがわかっています。
紀元前1万年~8000年にかけての古代遺跡から、この病気にかかったと推測される人骨が見つかっているほどです。
また紀元前1世紀ごろに生きたクレオパトラも、この病気に悩まされていたと考えられています。

アジアでもマラリアの痕跡は見つかっています。
殷という古代中国の王朝が残した碑文にも「瘧(おこり)」という文字が見られるほどです。
また、インドでも紀元前1200年ごろの記録にマラリアの症状が残されています。
このように、人類は太古から現在に至るまでマラリアと戦い続けているのです。

マラリアの特徴

マラリアとは、ハマダラカという種類の蚊のメスによって伝播される病気です。
ただ、ハマダラカ種に分類される蚊は実に400種類以上に上ります。
そのうちこの病気を媒介するのは約30種類で、これらの種類の蚊が夕方から明け方に活発に活動し、人を刺して病気に感染させるのです。
ただ、感染するかどうかはマラリア原虫の種類、これを媒介する蚊、感染伝播される人間、加えて環境的な要素によって決まります。

マラリアに感染すると、およそ10日から2週間ほどで頭痛や発熱、悪寒などの初期症状が見られます。
初期症状は軽症のことが多いので、マラリアに感染しているとは多くの人が気づきません。
ただし、熱帯熱マラリアの場合、感染してから24時間以内が重要であり、この間に治療しないとしばしば重症化し、死に至ることもあります。

マラリアの影響

マラリアは17世紀から18世紀にかけてヨーロッパで大流行しました。
その後、農業技術の発展や産業革命などの影響で発生件数は大きく減少し、一部の湿地帯のみに限局されていきます。
地中海沿岸を除いて、現在ヨーロッパで見られることはありません。

一方、アフリカや大西洋の諸国では、その後もマラリアによって人々は苦しめられています。
アメリカでも1930年代まで10万人規模で毎年感染者が出ていましたし、50年代には朝鮮戦争で、70年代にはベトナム戦争の影響で大流行しました。
日本でも、明治から昭和初期にかけて全国的に流行した病気です。
ですが、都市化が進んだことと衛生状態が整備されたことにより、現在の日本でマラリアがふたたび大流行する可能性は低いでしょう。