血液感染を起こす「エイズ(後天性免疫不全症候群)」

エイズ(後天性免疫不全症候群)の歴史

エイズ(後天性免疫不全症候群)とは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染で生じる感染症です。
適切な治療を受けないと、全身性免疫不全という重篤な症状に陥り、悪性腫瘍や日和見感染症を引き起こします。
エイズ(後天性免疫不全症候群)の歴史を遡ると、1979年にカポジ肉腫にかかった男性がニューヨークで医師の診察を受けたことが発端です。
ニューヨーク以外でもカリニ肺炎という珍しい症例が各地で報告されており、なぜこのような稀な症例が各地で起こるのか当初はわかりませんでした。

これらの症状がエイズによるものと初めて認識されたのは、同じアメリカで1981年のことでした。
ロサンゼルスの同性愛の男性5人がカリニ肺炎を起こし、また、ロサンゼルスとニューヨークで合わせて26人の同性愛の男性にカポジ肉腫が見られたことが報告されています。
これを機に、この疾患は麻薬の常習者や血友病患者、輸血受血者に見られることが確認され、エイズという血液感染を起こす病気が認識されたのです。

エイズ(後天性免疫不全症候群)の特徴

HIVは、逆転写酵素というRNAからDNAを合成する特徴があるレトロウイルスの一種です。
これに感染すると1週間から4週間で倦怠感や発熱、関節痛、発疹、リンパ節腫脹などの初期症状が表れます。
それがしばらく続きますが、初期症状が終わると無症候状態が長く続くの特徴です。
その期間は個人差が大きいですが、早くて半年ほど、長いと15年以上と言われていて、平均的には10年ほどです。

HIVは免疫の担い手のリンパ球に存在する細胞を攻撃するため、徐々に免疫力が衰えていきます。
それゆえ、ふつうなら感染したところでなんともない微生物への抵抗力もなくなり、カポジ肉腫やカリニ肺炎、サイトメガロウイルス肺炎といった珍しい病気を発症することになるのです。

HIVは血液や体液によって媒介されます。
したがって、性的接触、輸血や移植、静脈注射など血液によるもの、また胎盤や産道から胎児に感染するケースなどが多いです。
逆に言えば、他人の血液や体液に接触しない限り、この病気にかかる可能性はほぼありません。
涙や唾液も体液ですが、これらの分泌液に存在できるウイルスはごく微量なので、風呂などで感染するようなことは少なくとも現在まで報告されていません。

エイズ(後天性免疫不全症候群)の影響

エイズの脅威が認識されるようになって以降、地球規模でその予防と抑制のための運動が広がっています。
エイズ関連の国際会議が1983年に初めて開催されて以降、毎年のように国際会議が開かれ、エイズの蔓延を防ぐ取り組みが検討されています。
これらの会議で作られたエイズプログラムは、1992年に改定されたエイズ世界戦略に従って、現在世界すべての国で確立されているほどです。