パンデミック闘いの歴史「天然痘」

長い歴史のある感染症「天然痘」

天然痘は数ある病気の中でも、長い歴史のある感染症です。
天然痘ウイルスと呼ばれるウイルスが病原菌であり、17世紀から18世紀ごろにかけてヨーロッパで流行しました。

感染症の被害は死者数で比較されることがありますが、欧州では18世紀の終わりまでに約40万人もの人が亡くなったと言われています。
これは地方の郊外の都市人口くらいの規模であり、例として挙げると2020年における沖縄県の那覇市の人口が約30万人です。
これよりも多い人が天然痘によってなくなったと言えますから、街がひとつ吹き飛んでしまうようなインパクトがあったのです。

イギリスの医師によって、治療法が見出された

大きな被害をもたらした天然痘ですが、この治療法が確立されるきっかけとなった人物が、イギリスの医師であるエドワード・ジェンナーという人物です。
驚くべきことに、ジェンナーは自分の息子に天然痘を摂取させ、ワクチンの実験を行いました。
非常に危険を伴う行為でしたが、ジェンナーはこの実験により見事にワクチンを開発したのです。

現代の医師は自分の子供を実験や研究に協力させるなど、まず行わない人がほとんどと考えられます。
偉大な成果を残す人物は、ときに普通では考えられないようなことから発見などをするのです。
また、当時の欧州ではそれだけ天然痘の被害が切迫していたとも言えるのではないでしょうか。

「ワクチン」という言葉も、このジェンナーの功績によって広まりました。
予防接種がヨーロッパに広まるようになり、多くの人がワクチンを摂取するようになりました。
欧州だけでなくワクチン摂取による病気の予防は世界中に広まり、多くの国で現代に至るまでワクチンによる予防が行われるようになりました。

日本でも感染者はいたが、2000年代は感染者はいない

天然痘は上記のように17世紀のヨーロッパで大きく拡大しましたが、日本でも感染者はいました。
ただ、1950年代以降で2020年までに日本で感染した人はおらず、天然痘は既に過去の感染症となっています。

天然痘は今は気にしなくて良い感染症とは言え、用心しておくに越したことはありません。
感染症は1人が発症するとたくさんの人に影響が出るため、今後も予防の意識を持っておくことは大切です。

また、天然痘ウイルスと人間との戦いは、現代でも非常に大きな知見を与えてくれます。
昔の医療技術は今より劣っていたはずですが、それでも未知のウイルスに打ち勝つことができたのです。
これからまた新たなウイルスが出てきても、必ずや新たなワクチンや治療法が登場し、また根絶することができるはずという希望をもたらしてくれるのが天然痘と人との戦いの歴史なんです。