スペイン風邪とは
1918年から1920年にかけて、世界中で広がったインフルエンザの大流行が「スペインかぜ」です。
当時は第一次世界大戦の最中。兵士の移動や人々の往来によって、短期間のうちに地球規模で感染が拡大しました。
今のようにウイルスの正体もわからず、治療薬やワクチンもない時代。人々はただ「原因不明の熱と咳に襲われる病気」として恐れ、日常生活にも大きな影響を受けました。
世界人口のかなりの割合が感染し、命を落とした人も非常に多かったといわれています。
なぜ「スペイン風邪」と呼ばれたのか
名前に「スペイン」と付いていますが、発生地がスペインだったわけではありません。
当時、戦争に参加していた国々は「兵士が病気で弱っている」と敵国に知られるのを避けるため、流行の情報を伏せていました。
一方で、中立国だったスペインは報道の制限がなく、国内での流行や国王が感染したことまで大きく報じられました。
そのニュースが世界に伝わり、「スペインで広がった病気」と勘違いされた結果、スペインかぜという名前が定着したのです。
当時の写真を見ると、広い講堂にずらりと並んだベッドに患者が収容され、医師や看護師がマスク姿で対応する様子が残されています。
外出時にマスクを着ける人々の姿もあり、100年以上前の光景なのにどこか最近の出来事のように感じられます。
日本でも広がったスペイン風邪
日本にも1918年の秋ごろから流行が押し寄せました。
最初は兵舎や工場など、集団生活の場で広がり、あっという間に学校や公共機関、街全体へ。
郵便や鉄道などのライフラインで働く人々も次々に体調を崩し、社会全体が機能不全に陥るほどの被害が出たといわれています。
新聞記事には「悪性の風邪が猛威をふるう」「村が丸ごと罹患してしまった」などの見出しが並び、当時の深刻な様子を伝えています。火葬場が混雑したり、食料が行き渡らず困窮する家庭が増えたりと、今でいう災害に近い状況が生まれました。
また、軍艦の中で大多数の乗組員が感染してしまったという出来事も有名です。
閉鎖された船内で一気に病気が広がり、多くの死者が出ましたが、一度かかって回復した人は再び発症しなかったとされます。
この体験は「人は病気にかかると免疫ができる」という知識を裏づける例として語り継がれています。
スペイン風邪は、20世紀を代表する大きな感染症の流行でした。
100年前の人々も、マスクを着けたり人混みを避けたりと、今と似たような方法で流行と向き合っていました。
手洗いや消毒といった衛生習慣は当時は十分に整っていませんでしたが、基本的な考え方は現代と変わりません。
スペイン風邪験は「感染症は社会全体に影響する」という教訓を私たちに残しました。
そして、その学びは今の私たちが日常で行う小さな予防習慣にもつながっています。