人の命を脅かす動物由来感染症
新型コロナウイルス感染症の拡大は、私たちの生活を大きく変えるほどの被害をもたらしました。
しかし新型コロナだけでなく、さまさまな感染症が人の命を脅かしています。
感染症の中でも、社会の近代化に伴って急増しているのが動物からの感染です。
マラリアや狂犬病、エボラ出血熱など、動物由来の感染症は200種類以上あるのです。
WHO(世界保健機関)は、新型コロナウイルスの発生源も動物だと考えられると発表しています。
国連などの専門家は、これまでの20年間で動物経由の感染症が及ぼした影響は非常に大きく、金額にして1000億ドルの損失が出ていると換算しています。
動物経由の感染症は自然破壊が要因
動物経由由の感染症が増え続けているのは、私たち人間の自然破壊が要因です。
私たちの社会は便利に、そして快適になりました。
文明の進化とともに山林の伐採、鉱物資源などの採掘、土地の開拓・整備などが行われてきましたが、これによって多くの動植物が犠牲になり、生態系を大きく変えることになりました。
自然破壊によって生態系のバランスが崩れ、特定の種の生物だけが増えて、他の生物の数が減少するという事態が起こっています。
その結果、感染症を媒介する生物が数を増やし、感染症が拡大しやすい環境が作られているのです。
昔は人が暮らす領域と、野生動物が暮らす領域は明確に分けられていました。
しかし自然破壊によって動物たちは住みかを失い、人間と野生動物のテリトリーの境目がなくなりつつあります。
人との境界線が曖昧になっているため、これらの野生動物が人里に近づいて、家畜やペットへの感染を可能にしているのです。
野生動物から人の近くで暮らす動物へ、そして人へと感染を拡大させています。
専門家は、動物由来の感染症は家畜を飼育しており、野生生物に近い地域で発生しやすいと報告しています。
人は野生動物や家畜と比べると行動範囲が格段に広いですから、交通機関・流通の発達によって人口が密集する都市部へ、さらには国境を越えて世界中へと拡大していことになります。
一度感染症が起こったら、その地域だけにとどまらず、世界へと拡散するリスクも高まっているのです。
それに加えて地球温暖化による気候変動も、病原体の拡散リスクを高める要因になっています。
私たち人間が経済発展や生活利便性を追い求め、自然を破壊し続けてきた代償が、感染症のリスクの増大といえるでしょう。
これ以上の生態系破壊を止めるためには、自然環境の保護が急務とされています。
極力自然環境を壊さない持続可能な開発へと切り替えない限り、感染症はますます増えると考えられているからです。
今一度自然環境の大切さを認識し、効果的な自然保護対策に取り組む必要があるでしょう。